薄明
07/05/01
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蔵出しー
今日載せるやつは以前とある企画に提出したものです。
その続き?の独白みたいなものを書き上げていたのですがPCクラッシュしてHPに上げられなかったんですよね。続き分だけ上げてもワケわかめなのでまずは元ネタから。
時計塔ssです。
―トクントクン―
この世界でただ一人、彼女が奏でるあまい音。
この音を確かめるために彼女の胸の上に手を置くのが日課になった。
【醒めない夢】
「じゃあユリウス、俺行ってくるな。」
部屋の中に風が舞った。その風とともに聞こえてきた声のほうへゆっくりと視線をむけると、そこには時計塔の中だというのにマントを纏い仮面まで着けたエースが立っていた。
表情は仮面のせいでまったく読めないが声のトーンはいつもと変わらない。ただ、開け放たれた扉の内側へ入ってこようとしない所が以前とは違う。
その違和感のせいだろうか。私は何も答える気にはならず、すぐにアリスに視線を戻すと手から伝わる彼女の音に意識を集中させた。
「今度は少し帰ってくるのが遅くなるかもしれない」
―トクントクン―
「ホント、アリスにも困ったよな。あれだけ俺に迷子になるなって説教してたくせに自分が迷子になるなんてさ。」
―トクントクン―
「見つけたら、俺にもう文句は言えないぞって言ってやらなきゃな」
―トクントクン―
「いったいアリスはどこにいるんだろうな?」
―トクントクン―
イッタイアリスハドコニイルンダロウナ
ずっと気付かぬフリをしつづけてきた違和感の核心を突きつける言葉に、ついに耐え切れなくなって今度は顔を上げてまっすぐエースを見つめた。
やはり仮面のせいで表情はわからない。けれど視線はしっかりとこちらに向けているのが感じられる。
そしてその視界には確かにアリスもいるはずだ。・・・ベッドの上に横たわり、眠り続けるアリスが。
「・・・エース」
「なんだい?ユリウス?」
私の問いかけに答えるエースの声音は、3人でここで過ごしていた時のものと何も変わらない。
3人で過ごす時間はとても楽しかった。ただ、エースとアリスが二人で出掛けてしまうと気が気ではなかったし、それは私たちを時計塔に残して出掛けなければならないエースにしても多分同じだっただろう。
そしてアリスが、私達二人を同じくらい想っていてくれる事が嬉しかったし、歯痒くもあった。
少しでも傍に行きたくて。心を重ねるつもりで身体を重ね、遠のいた。
油断したらすぐに切れてしまう緊張の糸の上に、私たちはいつもいた。
そんなアリスが心の拠りどころをナイトメアに求めたとして、誰がそれを責められる。
そしてそれを受け入れたナイトメアと受け入れられないエースに、私が何を言えるというのか。
言える言葉なんてあるはずがない。
だから最後の言葉は当たり障りの無いものになった。
「気をつけて」
「あぁ。ありがとうユリウス。じゃあ俺行ってくるから」
時計塔を出て行くエースの背中を見つめて、ただひとつ確信を得るのは。
もう二度と、エースはここに帰ってこないだろうという事。
目覚めない彼女を独り占めに出来るならそれもいいかと思う私と
永遠に彼女を探し続けるエースとでは、いったいどちらがより狂っているのだろうか。
―トクントクン―
今日もアリスのハートはしっかりと鼓動を刻んでいる。
はたして。
醒めない夢に囚われたのは、眠れる君か、それとも我らか。
end
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