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薄明

07/05/01

   

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蔵出し その2

今日はバレンタインですねー。
私は簡単チョコプリンを作って食べました。ええ、自分で。

せっかくのイベント日なので蔵出しその2をやりたいと思います。
今日のは一応最後まで書いてある。
でもイマイチだなーと思って眠らせてました。
今もイマイチだと思うのですが、手直しする才能もないのでほぼそのままで載せます。

ハトアリより、帽子屋×アリス。
甘いような、そうでもないような・・・。


「・・・アリス」
名前を呼ばれて読んでいた本から眼を上げると、ブラッドが私から本を取り上げた。
それが、合図。

【はじまりの合図】

読書好きの人間にとって本にのめりこんでいる時に中断させられるのは本当に嫌なものだ。
例えばあと1ページめくれば犯人がわかるとか、とても感動的なシーンで涙ぐんでいたりだとか、難解な文章の意味をようやく飲み込んだりした時だとか。
そういうことにまったくかまうことなく、ブラッドはどんな時でも気分次第で私の本を取り上げる。
私はそれに、もっと怒ってもいいはずなのだけれど。


一番最初の、ブラッドが暇つぶしだと言ったあの時。
押し倒される直前まで読んでいた本に、ブラッドが身に着けていた真っ白な手袋が挿まれているのが目に入った。

どうしようもなく我侭で自分勝手で有無を言わさず暇つぶしという最低な理由で私を奪った男がしたそれに気がついた時、なぜだか泣きたくなった。

今、ブラッドが私から取り上げた本に挿むのは、薔薇の栞だ。
それはブラッドも読書好きだから当たり前にやる、なんでもないことで。
そこに私の事を思いやる気持ちなんてない。優しさなんてないと思うのに。
繰り返されるその行為が徐々に私の心の奥底に折り重なるように溜まっていって、名前なんてつけたくもない感情にゆっくりと育っていく。


「アリス、どうかしたのか?」
「どうもしないわ。それより早くして」
「・・・せっかちなお嬢さんだな」

以前より甘さを含んだように聞こえる声や熱をおびるようになった眼も、私は気付きたくなんてない。
だから、眼をそらしたのに。
それなのに。
そらした視線の先には栞のはさんだ本があって。
あぁ、逃げられないんだと思った。

 

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