羊でおやすみ＠アラビアンズロスト一週間企画

Ｃｏｕｎｔ　61～80
五日目　スチュアート＝シンクの場合

まったく、「眠れないから羊を数えてほしい」などというくだらん理由で私を呼びつけるとは･･････。
お前は私がそんなに暇だと思っているのか？
これでも北の執務をほとんど一人でこなしているのだぞ？
そのうえ今は昼間にお前の供までしてやってるんだ。今この国で一番忙しいのは私だといっても過言ではないかもしれん。

い、いや、帰らんぞ。疲れてもいない。
もうここまで来てしまったんだ。お前の望みどおり羊を数えてやる。
ほら、さっさとベッドに入るがいい。

･･････それにこんな夜更けに私以外の男がお前の寝所に来るなど許せんからな。

羊が６１匹
羊が６２匹
羊が６３匹
羊が６４匹
羊が６５匹

なんだ、変な顔で笑いおって。
律儀に数えてるから？
･･････お前が数えろと言ったんだろう！なぜ望みを叶えてやっているのに笑われねばならんのだ！
いいからお前は少しは眠る努力をしろ！

羊が６６匹
羊が６７匹
羊が６８匹
羊が６９匹
羊が７０匹

･･････アイリーン、お前は本当に眠る気があるのか？
な、な、な、何を言っているんだ！一緒に横になるなど出来るはずがないだろう！
確かに子どものころはよくともに昼寝をしていたがっ･･････！
お前は本当に意識が低すぎる！
いくら守り役が目を光らせているとはいえ本来であればこうしてこの場に私を呼びつける事自体がおかしいのだ！
私だからこうして何事もなくすんでいるんだぞ？
これが他の男であってみろ。なにをされるかわかったものではない！

少しはこの国のプリンセスの自覚を持って行動を律することを覚えるんだな。
さぁ、続きを数えるぞ。･･････せめて目をつぶれ。

羊が７１匹
羊が７２匹
羊が７３匹
羊が７４匹
羊が７５匹

ん？ああそうだな。子どものころには羊を数えてやったことはなかったかもしれん。
だいたいお前は羊どころか絵本さえ１ページも進むことなく眠りに落ちていたじゃないか。
いいや、確かだ。ベッドにあがったとたんお前はすぐに眠りに落ちていた。
それに寝相が悪くて横にいる私を蹴ったりしていたんだぞ。
嘘じゃない。私はそれでよく目を覚ましたんだからな。
まさかあんなに寝つきが良かったお前が、こうしてなかなか眠らんとは。
知らなかったし、思いもよらなかった。

･･････なにもかも変わってしまったんだな。お前と、私は。

さぁ、残りを数えてやろう。もう余計な口出しをせず黙っているんだぞ。

羊が７６匹
羊が７７匹
羊が７８匹
羊が７９匹
羊が８０匹

アイリーン？眠ったのか？

さっきはなにもかも変わってしまったと言ったが、やはり変わっていないこともある。
お前の寝顔を見るたびに、悪い夢を見てなければ良いと私は願ってしまうのだ。

おやすみ、アイリーン。良い夢をみるんだぞ。


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